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2006年10月31日 (火)

『ラビリンス』 by Kate Mosse(ケイト モス)

大学入試に必要ないから「世界史」を学ぶのは無駄だ。

インタビューにこう答える高校生を「可哀想だ」と思う。
『ベルサイユのばら』を面白く感じないだろう。
『アイーダ』を観てもピンと来ないだろう。
『恋に落ちたシェークスピア』を観てもラストの意味が解らないだろう。
もちろん『ダビンチ・コード』も、そしてこの『ラビリンス』も。

もっとも、高校で学ぶ「世界史」では、
中世ヨーロッパでキリスト教の宗派争いが「戦争」だとは分からないか、、、
「レコンキスタ」や「十字軍」という異なる宗教間の戦争は学ぶけれど、
せいぜい「アヴィニヨンの捕囚」ぐらいかもしれない。
実は、みかん星人は世界史で受験したし、
世界史の教諭が大変に面白い人だったので、随分と勉強した。
けれど、この『ラビリンス』に描かれるキリスト教宗派間の戦争が、
これほど悲惨なものだとは、知らなかった。

「カタリ派」という宗派は『世界史小事典(山川出版社)』にも載っていて、
この辞典をこの項から読み進むと、
『ラビリンス』で描かれる「アルビジョワ十字軍」までちゃんとたどり着く。
そう、『ラビリンス』の中のひとつの舞台は、
「アルビジョワ十字軍」(1209~29年)による虐殺の舞台・南フランス。
そして並列に描かれる、約800年の時を隔てた「現在」がもうひとつの舞台。
その間を何度か行き来しながら物語りはループの様に戻ってくる。
南フランスの慣れない地名の中で、
13世紀と21世紀を交互に読み進むのはなかなか骨が折れる。
 (このページはなかなか参考になった。地図としてはこの辺りだろう。)

が、実は、これは「表面」に過ぎなくて、
序盤から薄々感じはするけれど、本当の物語はその奥に隠されている。
その「オチ」というのは、なかなか面白くて、「なるほど」とは思う。
しかし、それをテーマに書くにしては、あまりにも情報が膨大だ。

この『ラビリンス』はヨーロッパではベストセラーだったらしい。
なるほど、キリスト教の歴史をある程度知っていて、
南フランスの地名にある程度なれて居たら、読みやすいかもしれない。
ここに書かれた膨大な情報も「興味津々」かもしれない。
例えるなら、
「壇ノ浦の合戦」を詳細に描きながら、平行して、
「新北九州空港の埋め立て現場から出土した謎の剣」の争奪戦を描き、
最後には「宮簀媛の遺言」が出てくる物語。。。

といった、そんなイメージ(笑)
こんな物語は、日本人でも読みこなせる人は少ないだろう。

さらにこの『ラビリンス』は「ミステリ」という体裁なので、
「現在」でもサスペンスがあって、人が死んでしまう。
「中世」での血なまぐさい描写に辟易しているのに、これは辛い。
せめて「現在」だけでも、もう少し滑らかに描いてほしかった。
というより「ミステリ仕立」にする意味が分からなかった。
 (まあ『ダビンチ・コード』もそうだから、この手の宗教モノの宿命か?)

登場人物の性格描写も説明口調で面白くない。
もしかしたら翻訳の問題なのかもしれないけれど、
 (しばしば同じ単語が出て来て目障り・・・「むきだしの腕」とか)
たぶん、この本の登場人物は「駒」でしか無いのだろう。
姉妹なのに性格がああも違うなんてありうるだろうか?
中世の、人望厚い騎士が、守るべき姫を裏切るだろうか?
「現代」での出逢いにしても、もっと描写すべき事があるはず。
一級の歴史小説のような醒めた視線で人物を描き出す事と、
一級のミステリ小説が匂わせる人間の息遣いは、なかなか相容れない。
しかも、二人のヒロインをシンクロさせるというのは至難だろう。
そして、『ラビリンス』はどの着地点にも届かずに終わってしまった。

『ラビリンス』を楽しめるのは、
中世のキリスト教内紛に詳しいか、南フランスの文化に詳しいか、
二つの時間で進行する物語を読みこなせる時間のある人か。。。

少なくとも、私には労多くして実りの少ない無駄な読書でした。。。あれ?(笑)


ラビリンス

  • ケイト・モス_::_森嶋マリ
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書評

【書評リンク】
おいしいもの食べようgood taste magazine by しーちゃんさん
20代独身雄のぼやき by 20代独身雄さん
Crescent Moon by Rayさん
mixi
フレパ

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コメント

こんばんは。
たとえ話がとてもわかり易く笑ってしまいました。要するに読まないほうが良いということでしょうか。

投稿: 桃子 | 2006年11月 1日 (水) 午後 11時57分

>。。。あれ?(笑)
つられて笑ってしまいました。鳴り物入りの割には…という作品でしたね。もっとおもしろくても良かったはずなのに。

投稿: きし | 2006年11月 3日 (金) 午前 12時48分

桃子さん、コメントありがとう。

「読まないほうがいい」本では無いと思います。
「そっちの話」のバリエーションを読みたい人には、
きっと面白く感じる部分があるのだと思います。

ただね。。。
「受験に要らない世界史は無駄」
と言い切っていた高校生の気持ちが解ってしまった感じです。

投稿: みかん星人 | 2006年11月 3日 (金) 午前 01時27分

きしさん、コメントありがとう。

そうだ、きしさんは『ラビリンス』を面白く読まれたのでしたね。
http://blog.goo.ne.jp/apheta1969/e/68a916d1c261c68e23a314d988ffdff8
「ほんとにそうなの?」は、本当に上手い!と感じましたが、
どうも、本の全体でそれを語ってなかったのが寂しかったですね。

それにしても、きしさんとは、嗜好傾向が似てますよねぇ。。。

投稿: みかん星人 | 2006年11月 3日 (金) 午前 01時34分

>それにしても、きしさんとは、嗜好傾向が似てますよねぇ。。。
そうみたいです。実は私、舞台も好きでして…。
こちらもリンク、ありがとうございます。

投稿: きし | 2006年11月 6日 (月) 午前 01時28分

をを。。。舞台好き!>きしさん

では、そちらの方も、
また、あちらの方(謎)も、これから、よしなに\(^▽^)/

投稿: みかん星人 | 2006年11月 7日 (火) 午前 12時04分

こんにちは!はじめまして。
本が好きプロジェクトで私も読ませていただきました。
日本史が選択科目だった私にはかなり難易度が高く、
みかん星人さんの、
『ラビリンス』を楽しめるのは、
中世のキリスト教内紛に詳しいか、南フランスの文化に詳しいか、
二つの時間で進行する物語を読みこなせる時間のある人か。。。
という部分に激しく同意(笑)してしましました!
上巻がことさら動きがなくて読むのが辛かったw(泣)
これから書評書くところです。。。

投稿: しーちゃん724 | 2006年11月25日 (土) 午前 09時55分

しーちゃんさん コメントありがとうございます。

いやいや、中世の世界史はかなり勉強した私でしたが、
この『ラビリンス』は難物でした。
というか、そうですよね、
「歴史に詳しくない人が読んでも面白い」
のが、いい本の条件ですよね。
(この辺りは、しーちゃんさんのブログで・・・)

私は下巻の「もたつき」で、本を投げつけそうになりました(笑)

投稿: みかん星人 | 2006年11月26日 (日) 午後 12時59分

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