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2006年9月28日 (木)

『中原の虹』 第一巻 浅田次郎

【中原に鹿を逐う】という言葉がある。
「中原」とは「天下」の事で、「鹿」とは「帝位」を指すそうで、
「鹿」の音が「(禄高などの)禄」に通じる事から、らしい。
「中原」とは、イメージとして、黄河の流域を指す、らしい。

閑話休題

この『中原の虹』は「中原」に「虹」を掛けようと夢見る男たちの物語。
ただ、誰もが「天下」をとろうとして行動するわけではなく、
 (多くの戦乱物語がそうであるように)
「平安」を求めたり、「侵略」への抵抗としての「統一」を目指す。
その「時宜を得る」というタイミングの面白さ、
人が人と出会うめぐり合わせの面白さ、
この『中原の虹』には、そういう面白さが一杯。

そもそも、中国を舞台にした「英雄物語」には、
『三国志(演義)』『水滸伝』という傑作があり、
その国土の広さ、民族の交わり具合、摩訶不思議な伝承など、
面白い物語を紡ぐには最高の舞台ではある。
が、例えば『水滸伝』には108人もの英雄、
『三国志』には一説では千人近い登場人物かあるという。
つまり「膨大」なのが、正直、難儀だっり。。。
ところが、この『中原の虹』の登場人物は、実に簡潔。
「1」とされるこの巻では、せいぜい20人程度が登場するのみ。
この簡潔さが、なんとも心地よい。
それでいながら、
300年の時を隔てたドラマも織り込まれていて、スケールの雄大さも心地よい。

その雄大なスケールを貫くアイテムが「龍玉」という帝位をもたらす玉。
キリスト教の「聖杯伝説」にも似たこの「龍玉」に関わる話のなんと深遠なこと。。。
そして、この「龍玉」を探せと命ずる皇帝と、それを受け止める男の駆け引き。
「1」のクライマックスとも言うべきこの場面で、私は不覚にも泣いていた。

私は、そうとは知らずに読みましたが、
この浅田次郎氏の新作『中原の虹』は、
氏の最高傑作との呼び声が高い『蒼穹の昴』の続編というか、
サイドストーリーなのだそうだ。
『蒼穹の昴』を読んだ人には、言わずもがなでしょうが、『中原の虹』は必読。
もちろん『中原の虹』から読み始めた私にも『蒼穹の昴』は必読でしょう。

この「1」は、最後に日本の軍人「吉永」が登場し、ますます面白くなる。
久しぶりに続編を待ち望む、興奮する「漢」の物語でした。


中原の虹 第一巻(ゲラ)

  • 浅田次郎
  • 講談社
  • 1680円

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書評

【書評リンク】
ほんの雑文 by yk さん
mixi
フレパ

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