久雄が違うとこんなにも違う鹿鳴館
1月14日『鹿鳴館』驚愕の初日と同じように、
冷たい雨が降りしきる自由劇場。
初日のような騒然とした空気も無いままに、
それでも「満席御礼」が今日への期待を伝えている。
ようやく、福井晶一くんが「清原久雄」として登場してくれた。
なにはともあれ、一安心(笑)
「ひとり役者さんが変わると、こんなにも、違うの?」
というのが一番の驚きでした。
そりゃあ確かに「ラダメス」での違いは明確で面白かったし、
「スカー」なんて役は演じる人によって全く違うキャラクターになる。
『キャッツ』においては言わずもがな・・・
しかし、『鹿鳴館』における「久雄」の違いが全体に及ぼす影響は、
静かだけれど、大きいものでした。
福井くんの「久雄」は、まず、声が低い。
そして語尾にかけて音程がさらに下がって、しかも消え入る。
それは、田邊くんの声がやや軽快で、
語尾にかけて艶が乗り、声の響きが残るのと正反対。
このおかげで、
野村さん演じる「朝子」の「久雄」との距離感が違ってくる。
快活に突き放すようだった田邊くんよりも、
陰にこもる空気が漂う福井くんに対しては、
寄り添うような、つまりは「母」のような距離のとり方をしてみえる。
それは、この二人のやり取りの途中で照明が暗くなる辺りで顕著。
この空気が残る場所に登場する「清原永之輔」と「朝子」の会話もまた、
その話題の軸が「清原」か「久雄」か、という部分からして、違う気がする。
田邊「久雄」に続くこの場面では「清原」の命が、
福井「久雄」に続くこの場面では「久雄」の未来が支点となっている、と感じた。
濱田さんと福井くんの場面においては、
これは「役者としての資質」云々ではなくて、
その共演時間の長さからくる「落ち着き」があって、実に熱い(*^^)
前回(1月26日)にはみせてくれなかった濱田さんの溶けそうな笑顔。。。
そして「朝子」と同じように一歩踏み込んだような距離感。。。可愛い。
「きっとみつけだしますわ」
なんて聴いてしまうと、違う演目思い出してしまう。。。
そしてそして、ここが一番面白かったのですが、
この熱い恋人に対峙する日下さん演じる「影山伯爵」の狡猾さ!
これがもう、まさに嫉妬を原動力にした八つ当たり満開。
そのからかい方の執拗で厭らしいことと言ったら、、、、呆れるほど。
まるで。。。
「ほぉぉぉ、、、君が人気の福井くんかねぇ?
君のおかげで今日は満席だって? なぁるほどぉ、、、
それでは、お手並み拝見といこうじゃないかね」
と言っている様な雰囲気。。。あくまでも、雰囲気。
これだけ舞台の雰囲気が変わると、
「どっちも観なければ」という事になるだろう。
田邊くんは素直にみえて、まさに「直情的」な性格の久雄。
だけど、実はコンプレックスの塊で、本当の心は誰にも見せない。
一方、
福井くんの「久雄」は素直な表現ができない青年で、
一見すると「複雑(コンプレックス)系」なのだけれど、
実は巧妙にそう見せかけているだけの本当は単純で寂しい青年。
まあ「アダルト・チルドレン」な人とでも言えばいいかな。
そう、漱石の『それから』の主人公・代助みたいで、明治の匂いかも。
この二人、和装でも洋装でも、違いがあるのですが、
洋装における福井くんの燕尾服のデザインは、面白くないです(笑)
田邊くんの燕尾服は、彼の細い体つきもあって、美しいですねぇ。
特に久雄のクライマックスでは、
この燕尾服の違いのような「差」があって、この違いだけでも必見です。
さて、では『鹿鳴館』とは、どういう芝居なのか、、、は、明日の心です。
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コメント
舞姿さん、こと福井狂さま、コメントありがたく存じます。
「違い」あっての「特徴」かと存じます。
飛田にも違いがあるのか、も、お伺いしたく存じます。
さて、問題のその場面。
登場の仕方の中に、
「朝子への慕情」と、
「清原への不信」が綯交ぜとなった様子が覗けるわけですね。
今の演出では後者に比重があるという事でしょう。
確かに今の演出は田邊久雄に似合いそうです。
福井久雄は、朝子への慕情に染められていて欲しいですね。
原作では、久雄は顕子と一緒に階段へ現れるのですよね。
こっちは「偶然」の匂いが強いのかと感じます。
私は、この原作どおりの登場の方が、
「三島らしいご都合主義」を感じられて良いかと存じます。
投稿: みかん星人 | 2006年2月 7日 (火) 午前 08時23分
長~いご無沙汰をしておりました。
久雄さんが福井くんになって、何回か観ました。
そこで、感想を少々。(ネタバレになるかもしれません)
後半、壮士乱入シーンでの久雄さんの登場の仕方ですが、福井くんが初日に見せてくれた登場の仕方の方が好きです。
何気なく舞踏場から出てきたら、階下のただならぬ状況に気づき、急いで階段を降りてくる、というのが初日の登場の仕方でした。
“田邊くんの久雄さんと違う!やっぱり福井くん、満を期しての登場だわ!”と思いました。
でも、その登場の仕方は初日1回きりで、その後の舞台では、初めから階下での異変に気づいて舞踏場から飛び出してくる、という、田邊くんの久雄さんとおんなじ登場の仕方になりました。
私、原作を読んでも、初日の登場の仕方の方が近いと思いましたし、細かいところで田邊くんと違う芝居をする福井くんの方が好きですワ。
では、ごめんあそばせ。
投稿: 舞姿 | 2006年2月 5日 (日) 午後 11時36分
ク~ミンさん、コメントありがとう。
初日のキャストは衝撃でしたけれど、
こうして比べて観る事を通して、
「やっぱり福井くんだわ!」と、
ますます「福井熱」が高まったのではありませんか?
福井久雄だけでは、あの最後の演技も、
普通のこととして受け止めていたかもしれませんものね。
日下さんったら上手の椅子に座り、
久雄と顕子の会話を聞きながら、
まさに「微笑」されていましたからねぇ、、、恐いですねぇ。
投稿: みかん星人 | 2006年2月 3日 (金) 午後 04時41分
こんばんは。「久雄の違い」、素晴しいです!
鋭い洞察力と的確な表現に思わずう~んと唸ってしまいました。
朝子との距離感は、私はあんまり考えてなかったので、次回注目してみます。
あ、影山伯爵の言葉は、リアルすぎて恐いです(笑)
投稿: ク~ミン | 2006年2月 2日 (木) 午後 11時44分
えみーごさん、コメントありがとう。
といいますか、過剰なTBをしてしまったこと、
ひらにご容赦ください。。。罰してください(*^-^)
そもそも、デフォルトは「福井久雄」ですから、
なにもそんなに無理してまで両方観なくても良いですよぉ。
たぶん、もう、機会ないと思いますし(笑)
あ、、、4月の『アイーダ』があるのでしたねぇ。
4月16日以降、狙ってください。。。
とかいって、また一週間で交替させられたりして(^^;)
投稿: みかん星人 | 2006年2月 2日 (木) 午前 12時26分
ハイタカさん、コメントありがとう。
ハイタカさんの「田邊久雄」所見はやく読みたいです。
そして、「福井久雄」との背比べも(笑)
CFYって、そーんなに面白いのですか?
投稿: みかん星人 | 2006年2月 2日 (木) 午前 12時23分
福井久雄の時だけでいいやー、と思ってましたが、
どちらも観なければ、という気になってしまいました・・・。
どうしてくれるんですか、みかん星人さん!?(笑)
あぁ、初日にいけなかったのが本当に悔やまれます。
↑まだ初日チケットが捨てられてないんです・・・。
投稿: えみーご | 2006年2月 1日 (水) 午後 11時29分
ああ・・・この日の来るのを信じていたよ!!(笑)
うんうん・・・3月ぜひとも福井久雄さまにお会いしたい。
あの笑顔のわけはここにあるんですね~~・・・
田邊久雄様については自分でまだレポをかきあげていないので、はいここでは触れませんが・・・
ああ・・・どっちの久雄が私の久雄なんでしょう・・・(←?)
すごい楽しみです。
3月・・・福井さんお願い・・・逃げないで・・・こんどこそ・・・
田邊さんはあの・・・ボビーで・・・・お会いしたいです(←希望)
投稿: ハイタカ | 2006年2月 1日 (水) 午後 11時10分
と、言うわけですので、柴さん、、、2時にがんばってね。
取れるのでしたら、やや上手が良いでしょう。
福井くんと田邊くんの「顔の上げ方」の違いとか、
とても面白いですよ。
投稿: みかん星人 | 2006年2月 1日 (水) 午後 11時01分
こんばんは。
うーーん、前予しようか悩んでいたのに、みかん星人さんの
「違い」を読んでしまったら、行きたくなってしまった…
今月は暴走月間になる予定なので、いっちゃおうかしら(笑)
投稿: 柴 | 2006年2月 1日 (水) 午後 10時05分