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2005年7月22日 (金)

『オペラ座の怪人』 もしくは、ミュージカルに関して。

佐野ラウル、村ファントム、沼尾クリスティーヌを堪能>『オペラ座の怪人』

佐野さんのラウルは「貴族である自分」にすっかり慣れている青年貴族。
実はこの「慣れている様子」というのはとても重要なことで、
この様子を通して観客はその役どころの「過去」を感じると思うのです。
佐野ラウルに感じたのは「中心に立って問題を解決することに慣れている」様子や、
「命令し慣れている」様子だったり、「狩猟に慣れている」様子といったところ。
そう、白馬を軽々と操る映画のラウル子爵に通じるものがありました。
おかげで、ファントムと対峙するラウルに血気を感じさせてくれて、
それがクリスティーヌの「怯え」に共鳴する辺りが伝わってきたり。

さて、村ファントム。。。
佐野ラウルもそうなのですが、ともかく芝居が巧い!
以前に村ファントムを観た後に、
「ミュージカルにおける芝居の意味」を書きかけていたのですが、
完成できずに置いておいたものが、以下。。。

 「ミュージカル・プレイ」は本当に奥が深い。
 世の「ミュージカル嫌い」という人の多くは、
 (無意識に)この「奥行きの深さ」に戸惑っているのではないか?
 そも舞台芸術は概して「唐突で特異なシチュエーション」な設定で、
 映画の様に細かい説明をし難く「緩やかな感情移入」が難しい。
 なのに、「歌」の意味や意義を台詞と同等に、
 或いはそれ以上に受け止めなければならないし、
 「歌」なのに、それが物語の(最も)重要な一部であるのだから困る。
 これらの全てを受け止めるのがなかなか難しい事だろうと思う。

 しかし、これらが「ミュージカル」の魅力であることは、間違いない。
 例えば『ライオンキング』。
 普通の舞台でも、役者が「雄ライオン」になったりする事は少ない(笑)
 更にその「雄ライオン」が歌うなんて「特異」そのもので、感情移入も難しい。
 なのに、「愛」も「夢」も「命の意味」も台詞ではなくて歌で表現される。
 けれど、
 その「特異な設定」が「普遍の感情」を際立たせ、独特の
カタルシスをもたらす。
 それがミュージカル・プレイの大きな魅力の一つだろう。

 こんな「ミュージカル」の中で、比較的「まとも」なのが『オペラ座の怪人』(笑)。
 映画になったそれを観ても、設定は簡単で、脚本も理解しやすいと思う。
 天才ロイドウェバーの巧みなスコアーで、満足度の高い演目になっている。

 が、残念ながらみかん星人は、
 
特異な存在のファントムの中に普遍の感情を感じ取ることが出来なかった。
 明晰な頭で完璧なスコアーを書き、人を人とも思わぬ所業を繰り返すファントム。
 それを高井さんが演じると、本当に完璧で「特異な存在」そのものに感じる。

ところが、村さんがファントムを演じると、少し様子が変わる。
歌の巧さを比べるなどという不遜なことは出来ないし、意味が無い。
が、村ファントムの動きの一つ一つには「同感できる」事が多かったぁ。
特にゴンドラの中での様子は、その心の動きが痛いほど伝わってきたし、
ダンジョンから二人を追い返す時の発声には、
全身が硬直するほどに感動させられてしまいました。

「孤高の天才」であろうと、「醜い殺人鬼」であろうと、
いや「百獣の王」だろうと「我侭な野獣」だろうと「浮気な燭台」だろうと、
そこに「あ、私と同じ」とか「あの時の、あの人」を感じさせてくれるならば、
物語りも、歌も、その特異ささえもが、自分の心に「ズシッ」と入り込み、
全身の血液を沸騰させるようなカタルシスを与えてくれるのだと思うのです。

それにしても、佐野さん、吊られたときあんなに回転して大丈夫なのかしら?(*^^)
ちと、息苦しく感じてしまった。。。

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コメント

さっしーさん、コメントありがとうございます。

キャスト発表が変わって1週間が経ちましたが、
実は、みかん星人としては「これで良いんじゃないか?」と感じています。
キャストの詳しい発表よりも、以前の『俳優ライブラリ』の復活とか、
俳優さんたちが「ブログ」を始めてくれて近況を書いてくれるとかって事を望みたいですね。

まあ、詳しいことは時間が出来たら書きたいと思っています。

投稿: みかん星人 | 2005年8月 7日 (日) 午後 10時34分

週末に行ってまいりますので、村ファントムと佐野ラウルの予習に参りました。しばらく高井ファントムでしたので、父性を感じさせる村ファントムが楽しみです。でもキャスト発表の方法が変わると、こういう予習も難しくなりそうです。

投稿: さっしー | 2005年7月29日 (金) 午後 09時37分

コメントありがとうございます。
一方通行になりがちなTBですので、このような形でリンクをはらせて頂きました。
 (TBに関しては近々に記事を作ります)

高木クリスティーヌ、私も聴きたい。今週はずっと登場されているのですよねぇ。。。ああ、辛い(笑)

投稿: みかん星人 | 2005年7月26日 (火) 午前 09時25分

こんばんは!TBありがとうございました。
みかん星人さんの記事を読んで、なるほど。と思いました。
何度も読んでしまいました。
確かに高井ファントムは完璧すぎるのかもしれませんね。
村ファントムの演技には私も涙が出そうになりました。
まったく違うタイプのファントムだからこそまた面白いのかもしれませんね。
好みは人それぞれかもしれませんが、私的に、初見の高木クリスティーヌが素晴らしくて、そちらばかりに目がいってしまったんです。次回はもっと村ファントムを堪能したいと思います。

それから、トラックバックのご紹介ありがとうございました。
今後とも食いしん坊なうさこをよろしくお願いします(笑)

投稿: うさこ | 2005年7月25日 (月) 午後 10時31分

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» 『オペラ座の怪人』 @ 海 [みかん星人の幻覚]
 『キャッツ』の興奮が醒めなかった事と、 ラウル子爵を北澤君が演じているという事 [続きを読む]

受信: 2005年7月25日 (月) 午前 10時27分

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