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2005年6月18日 (土)

『炎のメモリアル』

 お正月ごろから予告編が流されていて、
 タイトルは最悪だけれど、ぜひ観たいと思っていた1本。
 なにしろ『バック・ドラフト』という名作もあるほどに、
 消防士を扱った映画は面白いのであります。

 で、いやもう、こういう事だったのかと、痛く納得。
 つまりタイトルは「正鵠」だったという事なのです。
 これはまさに「メモリアル」として作られた映画であり、
 要するに【9・11】における消防隊のメモリアルなのですね。

 みかん星でも何度か書いているとおり、
 アメリカで「消防」と「警察」はアイルランド系人種の仕事なのです。
 『ギャング・オブ・ニューヨーク』しかり『アンタッチャブル』しかり。
 で、この映画でもその事をしっかりと描いています。
 『ミリオンダラー・ベイビー』でも描かれていましたが、
 アメリカで下層に居るアイルランド系の人々は基本的に「カトリック」なのです。
 アメリカという国の成り立ちを考えてみれば分かりますが、
 アメリカ合州国はプロテスタントの国なのです。
 現在の紛争はそのほとんどが「民族」と「宗教」に起因していて、
 つまりは、アイルランド系アメリカ人の立場は、そういう位置にあるわけです。
 (『ミリオンダラー・ベイビー』は、これを踏まえてないと理解できない映画)

 にも関わらず、国民のヒーローである「消防士」という存在。
 そして同時に、そのヒーローも「やはりアイリッシュ」であるという現実。
 (もちろん「差別」という現実ではなく、文化としてのアイリッシュの現実)
 彼らが見せる「勇気」の本質がどこにあるのか、、、
 それを最後まで突きつけてくれる作品となっていました。

 映画の前半中盤で結婚式が描かれますが、
 みかん星人がこれまで映画の中で観てきた結婚式の中で、
 最も「普通の幸せ」に溢れている結婚式でした。
 なんと幸せな、なんと愉快な、なんと温かい、なんと美しい人々であることか・・・
 これこそ「人類の歴史」が到達すべき境地とすら感じるほどでした。

 また、何度も流れる音楽は、
 『タイタニック』におけるアイリッシュ音楽を想起させる美しく物悲しいもので、
 これもまた、この映画を美しいものにしていました。
 「ホアキン フェニックス」君も「ジョン トラボルタ」も本当に素晴らしい演技。
 1本の映画としては少しだけ長いとは思いますが(実質110分)
 「いつまでも観つづけていたい物語」と感じられる内容の良い映画でした。

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