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2004年11月21日 (日)

『ミス・サイゴン』 @帝国劇場

 東宝ミュージカルは、これが初体験。
 来春には『レ・ミゼラブル』も掛かるとの事で、ますますお財布が・・・

 今日の配役は、、、
 「エンジニア」を市村・ヘロデ・正親。
 「キム」を松・山弦・たか子。
 「クリス」を坂本・シンバ・健児。
 「ジョン」を今井・ファントム・清隆。
 いやもう、、、こういうラインナップだと、この物語もここまで魅力的なのかっ!

 坂本君と今井さんの「四季主役コンビ」は、二幕目オープニングで圧巻。
 抑制の効いた今井さんの声は、ただもう陶酔させられてしまうし、
 今日の坂本君の声の滑らかさと勢いは、まったく「心配ないさ~」だった。

 松さんの素晴らしさは、予想を超えていた。
 今年観た『浪人街』での彼女も素敵で、舞台で大きく見えたけれど、
 今日の薄倖なキムでは、まさに可憐な乙女そのもの・・・
 しぐさの一つ一つ、台詞の一言一言が、
 愛に目覚め一途にクリスを求める「凛」とした女性なのだ。
 一幕目の最後、「命をあげるわ」と歌い上げる彼女に、私は思わず落涙。
 こんな気持ちにさせられるなんて、山弦なみに驚かされる。

 しかし、そんな彼、彼女らの芝居も、妖怪・市村正親あっての事だと思う。
 いま、市村正親という役者は、歴史に「名」を残せる数少ない本物の「スター」だろう。
 古今東西、いろんな「名優」が人々を魅了してきたけれど、
 その「歴史に残る名優」に勝るとも劣らない爛熟の極みに居ると思う。
 こんなタイミングに出会い、そして享受できるなんて、全く持って幸せだ。

 彼は、まさに「エンジニア」そのものとして舞台の上に存在する。
 だから、彼が発した言葉に応える言葉も、「台詞」を超えて「言葉」となる。
 彼が投げかけた仕草が、周囲の人々の仕草に「現実」を纏わせる。
 しかし、しかしだ、そのエンジニアの「言葉」も「仕草」も、
 全て「市村正親」という役者が意図し計画し制御している成果なのだ。
 「自然に演じている」のでも「役になりきっている」のでもない。
 市村正親は、エンジニアという人間を刻一刻「生み出している」のだ。
 全身全霊、全ての感覚と智恵と経験を総動員して。。。
 感動する。。。「人は、ここまで、できるのだ」と。。。


 こうして、ほぼ完璧な『ミス・サイゴン』という舞台を見てしまうと、
 実は、ますます、『ミス・サイゴン』という物語が嫌いになる(笑)
 こんなにも「アメリカ人は愚かだ」と憤れる物語は、、、少ない。
 そりゃあ、国家の元で翻弄されるG.I.だったりするのだろうけれど、 
 彼らはあまりにも「幼稚」で「傍若無人」で、そして「無思慮」だ。

 いったい、どういう理由で、この物語がブロードウェイで受けたのか・・・
 最後に「アメリカン・ドリーム」を歌うが、、、
 さて、アメリカ人は、これを「皮肉」だと理解しているのだろうか?
 もし、分かっているのなら、なぜまたあんな選択をしたのだろうか?
  (ま、政治に関しては彼我の差は少ないかもしれないが・・・)

 ともかく、魅力的な舞台だけれど、気分の悪い物語であることは、変わりなしっ。

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