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2004年11月10日 (水)

『VIVA!6×7』 by 松任谷由実

ユーミン3年ぶりのオリジナルアルバム。
ネットで注文してあったものの、期待していなかった。
ここ数年のみかん星人の言動を知っている人は、
「みかん星人はユーミンが嫌い」と思っているかもしれない。
実際、ここしばらく、と言うか、今世紀の情けない彼女の活動は好きではなかったし、
すぐに飽きてしまった前のオリジナルアルバム『acacia』にとどめを刺されたここ10年の彼女には、
がっかりさせら続けてきた。
最後に快哉を叫んだのは『ザ・ダンシング・サン』とそのツアーだったと思う。
ともかく、もうだめだと思っていた。

さて、そんな彼女の新譜『VIVA!6×7』だが、、、のっけから「やられた!」と感じた。
最初に聴こえてくるギターのリフ、そしてローズの様な正隆氏のキーボード。
これだ、これが「ユーミン」の音だ・・・とドキドキしていると、
さらに驚く展開(まあ、これはナイショにしておこう)に唖然とさせられる。
メロディーと歌詞をなぞってみると、
この1曲目『太陽の逃亡者』は『星空の誘惑』の続編のを描いた曲なのではないか?
と、そう感じた瞬間、気持ちが一気に80年代初期に飛んで行ってしまった。

ここしばらく「昭和レトロ」なものが流行っていた。
サザンもそういう路線でセンチメンタルな曲を出したりしている。
が、このブームには「昭和の湿っぽさ」を感じることが多い。
例えばその典型としてみかん星人も大好きなEGO-WRAPPINの『Midnight Dejavu 色彩のブルース』には「場末・夕闇・情」という空気が充満している。
が、昭和は「爽快感」に溢れた音楽も隆盛だったのだ。
西洋から入った音楽を咀嚼して「お洒落で心地よい音楽」が生み出され、
昭和50年代には「ニュー・ミュージック」と呼ばれていた(笑)

この『VIVA!6×7』には、その頃の匂いがする。
確かにユーミンの作詞の才は少し枯れてきている感じがして、
昭和50年頃、
つまり『流線型'80』から『REINCARNATION』までの「天才」としか言いようの無かった頃、
と比べるのは無理があるけれど、
それでもここ10年間のいぢくりまわした歌詞とは違い「風格」を感じさせる詞の世界が広がる。
メロディーも素晴らしく、正隆氏のアレンジも迷いが無くて、ストレートで気持ちいい。
2曲目の『恋の苦しさとため息と』は、今年50歳とは思えぬ瑞々しさに溢れた歌詞に驚かされるが、
よく読むとその深さに息が止まる思いがする。
さらにベースラインがなんともお洒落でそして懐かしい。
4曲目の『水槽のJellyfish』は、完全に脱皮したユーミンに出会える。
この歌詞が届けてくれる思いの「衝撃」はなんとも切ない。
誤植ではないだろうけど(笑)
タイトルは「水槽」なのに歌詞では「水葬」と書かれている部分に気づいた時の痛さは、
彼女が何度も与えてくれた心地よい痛みだ。
白眉は『灯りをさがして』だ。
もしかしたら「あゆ」も書いてしまうかもしれないこの物語をここまで研ぎ澄ませるなんて流石。
そして久しぶりに「ユーミンの声」でしか伝えられない曲に仕上がっている点も素晴らしい。
つづ く『永遠が見える日』も可愛い曲だし、ともかく飛ばす曲がない。
トータルで48分の宝石箱の様なアルバムとなっている。

もしも大切なものを失った経験があるのでしたら、
このアルバムは最高のパートナーになるでしょう。

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